戒名のはなしより

はたして「坊主まるもうけ」か

ここでお坊さんの味方をすると、社葬などお坊さんが二人、三人必要な場合は、他の寺のお坊さんに応援を頼むことになるのが大体だが、その場合にどれほどの苦労があるのか、なかなか一般の人にはわからない。そもそもお坊さんはいつも寺にいるものだと一般の方は思っている。
年中無休だと思われている。
さらには「坊主まるもうけ」という言われ方もする。
はたして、お坊さんの現実はそうであろうか。
収入面から見てみると、まず「戒名料」を含めたお布施はすべて宗教法人の収入として処理される。
お坊さんはその宗教法人の役員として給料をもらうのである。
つまりお坊さんはいくら収入があったとしても、自分の給料としてまるまるポケットに入る訳ではないのである。

次に仕事時間はどうであろうか。
拘束時間はやたらと長い。
たいていの寺では朝六時前後からお経が始まる。
そのお経の際には、その月その日の命日にあたる故人の回向をする。
「戒名」を付けた人はすべてその寺の過去帳に記されているのである。
故人の回向のあとには、檀家・門徒・信徒総ての方のための回向をする。
お経が終わると、本堂や庭などの清掃。
寺が広いと一日中掃除をしていなくてはならないこともある。
夜、通夜などが入った時は、だいたい寺に帰るのは九時過ぎになる。
この間大黒さん(奥さん)は留守番をしているのだが、墓参の方の相手や檀家、近所の人達の接待に追われるのが常だ。

こうしてみると、だいたい普通のサラリーマンの労働時間と比べてもかなり長い方ではないだろうか。
そのうえ夫婦共働きで下手をすれば子供たちまで駆り出される始末である。
ここまで働いて「坊主まるもうけ」では気の毒である。
多くの方は寺に行く機会が少ないために寺の実態をあまりにも知らなすぎるのではないだろうか。
そして、陰気だとか抹香臭いとかジジ臭いだどと言って、寺に一度も来たことのない人に限って、葬儀になると財力にモノをいわせて「居士」だ「院号」だと要求することが多いようだ。